「パチッ、パチッ」 静かなキッチンに、小気味よい音が響き渡る。
これまでは、お気に入りのショップで焙煎された豆を購入し、手動のミルでゆっくりと挽く時間が、私にとっての最高の贅沢でした。しかし、コーヒーという深い沼にハマるにつれ、いつしか「自分の手で豆を焼き上げてみたい」という想いが募るようになりました。そしてこの週末、ついにコーヒーの自家焙煎という未知の世界に足を踏み入れたのです。
初めての挑戦に選んだ生豆は50g。もし失敗しても、せっかくの豆を台無しにしたくないという緊張感から、まずは控えめな量でスタートすることにしました。
我が家には備え付けのガスコンロがないため、相棒に選んだのはカセットコンロです。換気扇の下にセットし、ハンドロースターに生豆を入れ、いよいよ火にかけます。そこからは、まさに自分自身の「五感」を研ぎ澄ませる真剣勝負の始まりでした。
まず変化したのは、その「色」です。薄緑色をしていた生豆が、熱を通されるにつれて黄色味を帯び、やがてシナモン色、そして深みのある茶色へと移ろいでいきます。次にやってきたのは「音」。ハンドロースターの中で豆の内部から水分が弾ける「パチッ」という一爆ぜ(いちはぜ)の音に、思わず耳をそば立てました。
そして何より圧倒されたのが「香り」です。青臭い匂いから、次第に香ばしい芳醇なアロマへと変化していく過程。焦がしてはいけないと、ロースターの隙間から立ち上がる煙の匂いを必死に嗅ぎ分け、本体を振る腕にも力が入ります。豆の表情をこれほどまでに凝視した時間が、かつてあったでしょうか。
結果から言えば、初めての自家焙煎は「半分成功、半分は苦い教訓」となりました。 火力のコントロールや、ハンドロースターを動かす軌道にわずかな偏りがあったのか、一部の豆に焼きムラができ、焦がしてしまったのです。完璧な仕上がりとは言えませんが、自分で焼き上げた豆をミルで挽き、丁寧にドリップした一杯は、どこか愛着の湧く、格別な味わいがしました。

「次はもう少し、火との距離を一定に保ってみよう」 「あの音の瞬間に火力を落としてみたらどうだろう」
失敗したからこそ、次の週末がもう待ち遠しくてたまりません。豆と対話し、香りに酔いしれる。そんな自家焙煎の奥深さに、私はすっかり魅了されてしまったようです。

コーヒーショップでも開くつもり?

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